HOMEDOCTOR’S EYE若手医師が語る高野山真言宗 大僧都 阿闍梨 静 貴生 先生

高野山真言宗 大僧都 阿闍梨 静 貴生 先生

クローズアップドクター

中医として、僧侶として

静 貴生(しずか・たかお)

【プロフィール】

静 貴生(しずか・たかお)

2002年 奈良県立医科大学卒業
2004年 協立総合病院 初期研修終了
2004年 東京女子医科大学東洋医学研究所 研究生
2005年 東京警察病院 消化器内科 後期研修医
2006年 地域医療振興協会 後期研修医
2007年 高野山 勧学会 初年目一=i僧侶の経歴)
2008年 同二年目一=i僧侶の経歴)
2009年 高野山真言宗 大僧都 阿闍梨

医師を志されたきっかけを教えてください。

実は、医師を志すにあたって、忘れ難い経験など特に大きなきっかけがあったわけではありません。私の実家は寺院で、かつ私は長男でもありますので、将来的に実家を継ぐことはなんとなく頭にありました。また、僧侶の仕事と併せて自分なりに探求してみたい分野として医学の道がありました。今では多くの方にとって、お寺といえば亡くなった後のことで、病気の治療を通じて生きている人と関わる医師の仕事とはあまり関係のないことだと感じられるかもしれません。しかし、医師と僧侶の役割が一緒であった時代もあります。医療と宗教という両分野が共に扱ってきた部分を見つけ、そこで自分のオリジナルの発展を目指したいと思いました。医師という仕事を通じて多くの人と真摯に向き合う、その中で何か大切なことが見えてこなければ、きっと他のどの分野を専攻しても何も見えてこないだろうな、と感じていたように思います。

将来像について迷いなどはありませんでしたか。

その部分に関して語り始めると、非常に長くなってしまいますが(笑)。正直に言うと、今でも迷い悩むことばかりです。しかし、「もし生まれ変わることがあっても、同じことをやっているだろうな」と思えるようになってきたのは、年の功というものかもしれませんね。(笑)

臨床に出てみて気付いたことなどがあればお聞かせください。

まず、人間が生きるというものはそれだけでとても尊く大きいものだということを実感しました。生まれること、老いること、病気になること、そしていつか死を迎えること、ひとりの患者さんとしての問題だけでなく、その方の家族や社会に対して非常に大きな広がりと影響を持っているのです。病院で仕事をしている時にも、病気という問題を通じて、患者さんを取り巻くご家族など多くの人との関わりがありましたが、今思えば患者さんが抱える症状を診ることに集中しすぎ、一人の人間としての全体像を知るということの大切さを知ってはいても、どれだけ重視できていたかについて反省する事も多いです。今は、病院での業務から離れていますが、人と社会、人と人の関わりを改めて感じさせられることも多いです。私が病院で知っている「患者」の部分は、決してその方の全てではなく、仕事や家庭など実際は社会や家族の中で多くの役割を果たしている、そういった部分も大切なのだということを改めて実感できたように思います。

中医を学ぶために中国に留学しようと思われたきっかけはございますか。

臨床に出てみて実際に診察をすると、学校の授業や教科書で学ぶような典型的な症状や所見だけでは解決できない問題が非常に多い事に驚きました。そのような経験の中で西洋医学的にはあまり注目されず、「不定愁訴」とされかねない症状や所見の中には、東洋医学的な立場からは非常に重要とされるものがあることを知りました。例えば、年配の方が風邪をひいてなかなか症状が抜けきらず「何を食べても口苦い感じがする」という話を聞くことが何度もありました。これは、漢方で非常に重視される古典「傷寒論」では、「少陽病」といわれる病態の典型的な症状のひとつです。現在、上海で中医(中国で体系化された伝統医療)を学んでいるのですが、そのひとつの理由として、上記のような多様な訴えに非常に興味が湧いてきたことが挙げられます。どの様な症状であれ、実際にその症状で悩んで病院まで足を運ばれた方が目の前にいらっしゃるのであれば、私が学び技術と知識を高めた医療を提供させて頂くことによって、何かお役に立ち喜んで頂きたいと思っています。もちろんこれは「西洋医学はけしからん」などという否定ではありません。私はただ、多様な考え方や体系の中で少しでも多くの方のお役に立ちたいと思っています。

今後、医師としてどう進化していきたいと考えていらっしゃいますか。

今は、中国で行われている正規の学校教育をしっかりと身につけたいです。私は武道を長くやっているのですが、武道の世界などでは「守破離」という言葉がよく使われます。まず、その分野における確かな基礎となる部分を作り(守)、その基礎に立って工夫を加えていき(破)、やがて自分自身の展開が開けてくる(離)と言われます。今は中医学の「守」の部分をしっかりと築きたいです。
上海でご指導頂いているのは、中医学基礎の学問体系を創設された張伯訥先生の高弟・李其忠先生ですが、先生が書かれた中医基礎理論のご本を、日本語に翻訳しています。このことも私にとっては先ほどの「守」の部分に当たると思っています。今後は機会があれば、中医学の基礎理論の紹介と臨床を通じて、日本に中医を紹介していきたいと思っています。逆に、中国に対しても日本の良さを伝えていくことができればと思っています。医療面だけにとどまらず、中国にいるとたくさんのギャップに直面します。実地で日本や中国に対して感じるギャップは、テレビやインターネットで得られる情報とはまた異なったものです。それは、自分にとっての「日本」というものが何かを考えさせられるよい機会になりました。日本を離れて初めて、日本の文化や伝統の大切さやその水準の高さなども、不思議と分かってくるものですね。

尊敬する先輩医師はいらっしゃいましたか。

私は、初期研修の時に忘れがたい経験をしました。夜中に小児が救急搬送され初期治療を担当しましたが、症状のコントロールが難しく非常に難儀したことがありました。困り果てて深夜に小児科の医師に来て頂いたのですが、その医師は嫌な顔一つせず対応して頂き、非常に強い感銘を受けました。後日、実はその日の自宅待機の担当は別の小児科医師だったことを知り、更に申し訳なく思うと同時に感謝の気持ちでいっぱいになりました。その先生に及ばないまでも、困った時に力になれるような医師になりたいです。
今はまだ何かを伝えられるほど専門分野の力量を高められているわけではないので、お恥ずかしい限りですが、今後もどんどん知識を吸収し腕を磨きたいです。そして、興味を持ってくれる後進がいれば、様々なことを気軽に質問し易い先輩になりたいと思っています。

医師を志す医学生にメッセージをお願いします。

私もまだまだ若輩者であまりたいした事は言えませんが(笑)。
まず、皆様にはぜひ医療分野だけでなく、いろいろな分野に興味を持って実際に学び経験して頂きたいと思います。例えば、経済は現代世界の動きと、歴史は今までの積み重ねを通じた現代の状態と、法律は現代社会で基本となる規則として、現代社会と大きく関連しています。そして、医療も決して現代社会から独立した分野ではありません。
次に、自分自身の経験を通じて、たくさんの疑問を持って頂きたいと思います。疑問を持った時には少し立ち止まり、疑問の気持ちが起こった原因を考えて頂きたいと思います。そういった事の繰り返しを通じて、本で読んだそのままの知識だけでなく、実際に自分の血肉になっていくことを実感できると思います。
何かの分野に真剣に取り組んでみると、少しずつその分野の原理原則の様なものが分かってくる事もあります。浅学の身で大きいことを言うのも気が引けますが、それらの原理原則は実はあまり複雑ではないと感じています。そして、ある分野での原理原則は他の異なった分野でも通じることが結構あると感じています。例えば、私が長年やってきた武道の経験を通じた話です。以前、ある流派の師範の仰っている技術を何とか理解し体現したいと思い、かなり本気で研鑽していました。当時も本当に出来るのかを疑問に思いながらでしたが、今更ながらに物理な面からも、やはり体得し実現するには無理がありました。稽古の中で生じた「これは本当に出来るのか」という疑問を、「何か境地があるに違いない」「出来るようになりたい」という強い憧れが打消してしまい、せっかくの疑問を重視しなかった結果だと反省しています。このことは、武術の鍛錬としては回り道でしたが、原理原則の大切さを実感し、自身の限界に納得ができたという面では大きな収穫だったと感じています。加減乗除や物理の基礎などの単純な原理原則に照らし合わせて無理があるものは、やはりどこかに無理があります。そして、そのことが分かった時に、それまでとは違った武術の展開が見えてきました。この経験は、実学としての医学を考える上でも、大きく役立っていると感じています。
臨床でも何かおかしいと感じた時には、それが重要なシグナルだったことがありました。以前に診た同じような症状の患者さんと比べて、目の前の患者さんは「数値の下がり方が少しおかしい」「痛みを訴える場所が少しおかしい」と感じて調べてみると、癌や心筋梗塞など重大な疾患がみつかりゾッとしたことが何度かあります。我田引水になるかもしれませんが、これも経験と疑問を大切にして良かったと感じさせられた出来事でした。
現在の医療を取り巻く情勢が厳しいのは皆様ご周知のとおりです。様々な分野で積み重ねてきた皆様それぞれの経験と知識、そしてそこから生まれてくる疑問はきっと皆様にとって大きな財産となっていくでしょう。

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