HOMEDOCTOR’S EYE若手医師が語る麻生飯塚病院 本田宜久 先生

麻生飯塚病院 本田宜久 先生

クローズアップドクター

医療現場でのコミュニケーション

本田 宜久(ほんだ・よしひさ)

【プロフィール】

本田 宜久(ほんだ・よしひさ)
1999年 長崎大学医学部卒業。
麻生飯塚病院にて初期研修終了後、現在、同病院呼吸器内科勤務。研修医時代より、コミュニケーション失敗事例を数多く見聞き、経験された。その中で、一般 化でき、共有できるスキルや心がけを病院内外で発表。「自己を振り返る習慣」の確立を目指し、本日も臨床の現場で後進の育成に励まれている。

【医療現場でのコミュニケーション】

MC:「医療現場でのコミュニケーション」について、先生が関心を持たれるようになった経緯をお聞かせ下さい。

本田:「学生のうちは、好きな人同士や気の合うグループで過ごすだけでよいことが多いが、社会人になるとそうはいかない。自分とあわない人とでも上手くやっていかないといけない」と、ある本で読んだことがあります。
たしかに、医師として社会にでてみると、一見、理不尽に感じられる対応が確かにありました。

<CT画像の緊急読影を放射線科医に頼む場面>
本田 「お忙しいところ、申し訳ありません、先生よろしいでしょうか?」
放科医「今、忙しいんだけど!!」
と怒られた。後日、同様の場面があった。
後輩Dr.K「先生!助けが必要です!ちょっと画像見てください!」
放科医「しょうがねえなあ(笑)、見せてみな」
と、読影に協力してくれていた。
「この違いは、何故?何??」それは、衝撃的瞬間だった。
@タイミングの問題なのか?
A場所の問題なのか?
B相手、相性の問題なのか?
Bそれとも自分だけの問題なのか?
相手に責任を預けてしまっては、なんの解決策にもならない。いつしか、不満が心に生じ、愚痴となって、自分の口から出ることで、「自分の心」、「愚痴を聞かされた人の心」、「病院の雰囲気」を汚してしまうだろう。
しかし、これはチャンスである。人の責任にせず、自分の改良ポイントを探すことが出来れば、人間として成長できるはずなのだ。特に、研修医時代は、人の粗探しをしている暇も無ければ、資格もない。研修医として穴だらけの自分を許し、育まれて生きているのだから!!!

そんな気持ちで、実際にあったコミュニケーション困難例を一つ一つ振り返ってみた教訓をまとめ、院内の同僚や後輩相手に自主的に発表していたのが原点です。
医師として、技術や知識のみならず、人間として成長していくためには、毎日、自分が発した言葉を振り返ることが必要だと感じました。最近の医学教育で は、行為を振り返ることの必要性が、significant event analysisとかreflectionと言ったキーワードで協調されつつあります。私は、「心と言葉と行い」を振り返ることが大切だと思います。とくに自分の心は自分にしかわからないので、「正直に」、「静寂の中で」、「一人で」、「自虐的にならずに」振り返ることが大切だと思います。

【重大な出来事を振り返る習慣】

MC:研修医の先生を指導する中で医学教育という観点から考えますと、今後どのようなことが必要と感じられますか?

本田:アルコール中毒の診断は、「この人がアルコール依存である」と決めることではない。「この人にとって、どれほどアルコールが必要だったか」を理解することだ。という言葉を、研修医がよく利用する教科書で見つけたときの衝撃が、この問いに対する答えになります。
研修医を見て、コミュニケーションや対人関係能力に問題があるのではないかと感じた時に、「このような態度をとることが、彼にとっては必要であった」ということを理解できるようになりたいです。
「理解できなければ、押し付けになり、押し付けでは身につかない。」分かってもらったという実感があってこその、コミュニケーション教育なのだと思います。
とは言え、そのようなディープな付き合いを全研修医としていては疲れるので、その他、わりと身に付けやすい最低限のポイントは以下に集約されるでしょう。

@ 上司への報告・連絡・相談の習慣付け。
A 相手を気遣う言葉。「今、宜しいですか?」
B 短時間のコンサルテーションのポイント
C 医師以外との職種とのやりとり。
D 患者・家族とのやりとり、病状説明の心がけ
E 同僚と共に成長する文化の形成
F 重大な出来事を振り返る習慣(できればその時の心も)

コミュニケーションについて多くの人の共通するポイントもありますが、個人個人に応じた課題があるでしょう。F振り返りの習慣で得た個人の気づき が、多くの人の学びにもなり、共有財産となっていくだろうと思います。この財産は、われわれが臨床で得た知識や技術が古く錆付いた後にも、輝く心の内なる 財産となっていくだろうと思うのです。

私なりにまとめた@〜Fの詳細は、下記参考文献、サイトを参照下さい。
1)レジデント・サバイバル
http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2004dir/n2568dir/n2568_09.htm
2) がん患者と対症療法Vol.17 No.2 2006年10月号 卒後教育とインフォームドコンセント
http://m-review.co.jp/magazine/mag26/map_26.htm

【今後のビジョン−−医療分野でのコミュニケーションで人の役に立つ】

MC:先生の今後のビジョンについてお聞かせください。

本田:先日、以下のような印象的な会話をしました。私が看取った男性の奥さんとの会話です。
本田「あれから、ご主人は夢に出てきましたか?」
妻 「ああ、49日が終わった頃に出てきました。」
本田「どうだったですか。」
妻 「ニコニコしてね。病気も治っていました。それっきり、でてきません。」
本田「ああ、そうですか。」
妻 「ニコニコしてそれから出てこないのでね、成仏したかなあと思います。」
本田「なるほど。ご主人なら、きっとそうでしょうね。」
私にはそれなりに死生観があります。死生観に裏打ちされた安心感を体現した医師でありつつ、あまり押し付けない雰囲気を醸しだしたいです。

私にはそれなりに死生観があります。死生観に裏打ちされた安心感を体現した医師でありつつ、あまり押し付けない雰囲気を醸しだしたいです。
「死生観を持った心の暖かい医師になりたいが、死生観を語る前に一般的コミュニケーションの常識が必要だろうし、コミュニケーションを語る前に救急医療の最低限の技量が医師には必要だろう。」 これだけの単純な理由で救急病院に就職し、会社の基本のコミュニケーションを医療現場で応用できるか試みてきました。気が付いたら8年経ちましたが、これ からも、この道を歩むにつきます。その道の途中、日々の医学の精進が必要なのは当然ですが、己の人格を磨くために、自らの言葉やその言葉に込めた本音を絶 えず振り返っていく習慣を保ちつづけることが重要だと感じています。
私自身が「自己を振り返る習慣」を深く確立させることができ、それを多くの医療者が真似しても有用だと思えるような形にまで昇華させたいです。自分が大切だと思っている振り返りの分野で人の役に立つことが出来れば、私も成仏できると思います(笑)。

【医療有資格者の皆さんに一言!】

MC:ありがとうございました。では最後に医療有資格者へのメッセージを宜しくお願い致します。

本田:私の心の中に沸沸と湧いてくる思いは、以上のようなことです。まだ、それがどのような形で実を結ぶのか、どのような出会いがあるのか、不明なことだらけですが、だから人生は楽しいのだと思います。

追伸)
@報連相(報連相)については、日本報連相センターの書籍がわかりやすいです。
http://www.ne.jp/asahi/nhc/itfj/
A「心と言葉と行い」を心静かに振り返るというのは、あたりまえですが、私がやり始めたなんてものではありません。お釈迦様が説かれた八正道を自分なりに実践しようと努力しているところです。

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