HOMEDOCTOR’S EYE若手医師が語る聖路加国際病院 堀之内秀仁 先生

聖路加国際病院 堀之内秀仁 先生

クローズアップドクター

学生時代のイメージと現在

堀之内秀仁(ほりのうち・ひでひと)

【プロフィール】

堀之内秀仁(ほりのうち・ひでひと)

1997年東京大学文学部社会学専修課程卒、2003年鹿児島大学医学部卒。学生時代より各種勉強会を主催し、学内外での委員会やプロジェクトにも参加。 医療情報の幅広いシェアを目的に「医学の歩き方」ウェブサイト作成も手掛ける。現在は聖路加国際病院内科チーフレジデントとして、診療のみならずレジデン ト教育・病院のマネージメントに関わる領域でも大活躍中です!

【学生時代のイメージと現在】

実際の臨床現場はだいたい学生時代に予想していた通りでしたが、強いてあげるとすれば、イメージが違った部分が二つあります。 一つは「医療に対する捉え方」で、予想以上に、「お医者さん任せ」だという印象を持っています。巷に普及している情報はまだまだ質が高い情報ばかりとは言 えず、諸外国のようにPatient informationを充実させて、患者が自己学習する機会を設ける動きにまだまだ乏しいのだということを実感しました。その延長線上にあることです が、患者・家族−医師コミュニケーションのなかでも、医学生時代に学んだOSCEでの医療面接などと実臨床の雰囲気の違いを感じました。最近でも「とりあ えずどの薬を飲めばよいのですか」といった手っ取り早い答えだけを求める患者さんが散見され、医療に対するニーズも無理があったり、もう少し自己学習が必 要だったりと、医療者側の努力と同時に、患者教育の必要性を感じています。
もう一点としては、予想以上に、病院や医師ごとの医療内容が標準化されていないことです。学生時代は背伸びして最新の文献などを読んで、実臨床でも 100%こういうことが行われているのだろうと、期待していました。実際、臨床の現場に出てみると、自分自身でも標準的な治療よりもまずは目の前の事柄の 処理に振り回されてしまい、また、症例ごとに千差万別でevidenceを目の前の患者さんに適応していくことの難しさを痛感しています。

【こんな変化に驚いた〜あの頃と比べてみると】

卒業してここ3年間ぐらいで一番変化した点というのは医療関係のインターネットメディアがかなり普及したことです。私が学部学生だったころに「医学の歩き 方」というウェブサイトを作りました。そのお手本というか、モデルにしたものとして当時諸外国で普及し始めていたメディカルポータルサイトがありました。 いわゆる医学生・レジデント・専門医分け隔てなく医学情報を提供するようなウェブサイトで、そのなかから現在もMedscapeRや、WebMDRなどが 残っています。「医学の歩き方」の作成を思いついたのは、医学情報を学生の視点(それがひとつのスパイス!)から集めて掲載し、広くシェアしようと考え、 また日本版メディカルポータルサイトのさきがけになれないかと考えてのことでした。
その中で出てきたのが、医学知識の面もそうですが、医療職の間のコミュニケーション、医療職のキャリアアップの道しるべが必要だという視点でした。そのた め、まず学生でしたから、ロールモデルの提供や研修病院の探し方といったところに重点をおいてサイトを作成していきました。その頃から、日本でも製薬会社 主体のMediProR(現在のm3.comR)やCareNetRなどといったものが急速に普及しはじめ、正直驚きました。

【現在の興味・・・それは】

今、内科のチーフレジデントをしている中で一番興味があることは、研修医にとって分かりやすく、無理がなく、キャリアアップをイメージしやすい研修プログ ラムを作ることです。さらに、レジデントもしくは他の医療職者を含めた就業状況の適切な評価の基準を考えたいとも思っています。看護職の方では既に業務量 の研究は多くあると思いますが、日本の研修医に関しては「すごく忙しい」ということが言われている程度で、米国で1990年代に色々な研究が行われ、「レ ジデントの週80時間労働」が2003年にACGMEという機関で制度化されることになったのとは好対照です。80時間と言うとそんなに短くもないのです が、日本のように、1週間40時間、1日8時間という暫定的な基準しかない状態に比べればかなりの進歩と言えます。米国では病院の研修施設認定からして、 その基準から外れると認定されなくなりますから、次から研修医を雇うことが出来なくなってしまうぐらい厳しい規定なのです。
医療界全般を見渡すと、医療費が低くおさえられているのは看護職やその他のコメディカルを含めて、もともとある「頑張ってしまう日本人」に支えられている 状況があります。今後は、そのような頑張りすぎの日本の医療現場の状況を、できるだけ客観的な指標を用いて評価したい。具体的には、過重労働が起こったと きにそれによりニアミス(ヒヤリハット)が増えていないか、どのくらい働くと日本の優秀な研修医でも疲弊してしまうのか、そもそも医療現場の「忙しさ」と は何に一番反映されるのか、など調べてみたいですね。

【将来に向けて】

現在聖路加の歴史と伝統あるレジデンシーを広く見渡せるチーフレジンデントという立場にあって、大変充実しています。そもそも、聖路加を選んだ理由も、第 1に初期研修をしっかり行いたいということとがあって、2番目くらいにチーフレジデントを務めてということがあったくらいです。チーフレジデントの期間も 半分ほどまできており、自分なりに取り組みたいことに積極的に取り組んでおり、それなりの成果を得られそうです。
今後、私個人としては臨床医としてのスキルをもっとあげていかなければならないというのが命題です。短期的な目標としては呼吸器を専門にしようと思ってい ますので、その勉強をしっかりして「呼吸器の専門の医師です」と控えめながら胸をはれるくらいまでしっかり修練することが一番です。その先に興味があるこ とは、老年医学や腫瘍学なのですが、まずは自分なりにひとつスキルを身につけて、それを切り口に色々と取り組んでいったほうが現実的かと思っています。

【医療有資格者の皆さんに一言!】

私は最初、東京大学で社会学を学んでいたのですが、正直大変不真面目な学生で、今思うとよく卒業できたと思うほどです。ただ、私が社会学科にいて、強く影 響を受けたことはたくさんあって、そのなかでも一番は恩師の稲上毅先生からの薫陶の言葉でした。卒業式でしたか先生の退官の記念式でしたか、「皆さんは社 会学以外の領域も含めてさまざまな人生を歩んでいくでしょうが、私が社会学者として皆さんに一つだけ心に留めてほしいのは、Public Interestを持ち続けてほしいということです。」と、お言葉をいただきました。社会学というのはそもそも人間を集団のなかの一員として考える学問で す。特に稲上先生は組織社会学や産業社会学など人間が集団で取り組んでいくような事業について研究されていたこともあり、その視点で個人というのを見てい ました。大切なのはその組織なり産業なりが高まっていくためには、所属する一人一人の個人がPublic Interestを持つことだ、とおっしゃりたかったのだと理解しています。ですから自分の取り組んでいることが他の方にどういう影響を及ぼし、それが本 当にポジティブな影響を及ぼしているのか、という視点を常に持っていてください、と。
医療職の中でも色々なキャリアの積み重ね方、様々な生き方があると思います。医師も大学の医局に入り大学の人事でずっとではなく、流動化してきています。 こういう時代だからこそ、私達医療職が忘れてはいけないのはやはりPublic Interestなのではないかと改めて思うのです。
少し話はそれますが、医療は最古からある3つの専門職(Profession)のうちの1つです。残り2つは弁護士と神父さんです。これらに共通している ものは、本人にとっては避けようがないような“緊急事態”に、“日常的”に接している職種だということです。専門職というのは、医師であれば患者、すなわ ちクライアントの緊急事態に無条件に対応しなければいけないという側面を元来持っている職種なのです。プロというと一方で自由で自律的な語感もあります が、本来の意味のプロフェッショナリズムは、自分たちが携わっていることがクライアントにとってどれほど重大なことかという視点、そしてさらには、医療職 であれば公衆衛生的な社会全体への視点、すなわちPublic interestを持っているということがその条件なのだ、と考えます。

追伸〜インタビュー後記〜

ご勤務後の貴重な時間にも関わらず、終始穏やかにお話下さる先生でした。社会学を修められていることもあり医療に関しても多角的な視点から捉えられてい らっしゃいます。そして先生が感銘を受けられた「Public interest」という言葉と意味は取材する私どもの心にも大きく響くものがありました。堀之内先生のような存在が医療を内部から変えるエネルギーにな るのだろうと感じております。この度は本当にありがとうございました。この場を借りて深く感謝申し上げます!

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