HOMEDOCTOR’S EYE若手医師が語る聖路加国際病院 飛田拓哉 先生

聖路加国際病院 飛田拓哉 先生

クローズアップドクター

気持ちの変化…

飛田拓哉(ひだ・たくや)

【プロフィール】

飛田拓哉(ひだ・たくや)

2001年 名古屋大学医学部卒
聖路加国際病院にて内科初期研修医、内科チーフレジデント、4年目からは腎臓
内科の後期研修医として勤務。新たな分野へ挑戦するため、勤務を続けながら勉学に励む。
今夏よりミシガン大学のビジネス・スクールへ留学中。

【気持ちの変化・・】

留学に至るまでの5年間、臨床現場で勤務してきた私の気持ちに新しい変化が始まったのは、3年目でチーフレジデントや病棟長を経験し、患者さんやご家族の方達と医療以外の部分で接するように心がけてからでしょうか。
研修医1年目・2年目は患者さんへの説明など行ってはいるものの、治療自体に精一杯で、患者さんのご家族の背景までに考えが及ばないことがありました。けれども医師3年目の秋に祖母が脳梗塞になり、私も「患者の家族」という立場を経験してから、考えが変わりました。
大変ですね、患者さんの家族は。祖母を介護する為に仕事で多忙な母が週3〜4回往復4時間かけて病院へ通ったり、母自身も体調を崩したり・・。私は平日の昼に訪問できなかったので、夜や休日に主治医のお話を伺おうと手を尽くしてみたものの、時間的な折り合いがつかず、母からの又聞きにより病状を把握していました。歯がゆかったですね。なぜそうなってしまうのか・・・振り返ってみると、私も「夜にご家族へお話しをする」という選択肢を積極的には提案していませんでした。 “入院している”状態は医療従事者にとって日常的な事でも、患者さんやご家族にとっては非日常的な事。なのに、患者さんのご家族がどのように日々生活されているかについて、正直なところ私はあまり理解していなかった。以来、随分と無理をして患者さんの希望を叶えようとしました。けれども負担が増えるばかりで上手くいかない。医療従事者も事務の方も、また当然患者さんやご家族、行政も一生懸命に取り組んでいるのに、「なぜ上手くいかないのか?」という疑問が大きくなっていきました。そして、行政や経営管理に良い方向に向かう解決方法があるのではないか、との思いが留学へのきっかけとなりました。医師としてのキャリアも素晴しいと思いますが、臨床に加えたプラスアルファの何かを学ぶことが私にとっては必要なのです。

【経営管理学修士(MBA)への道】

「医療の社会化」と私は捉えていますが、社会の中で行われている効率を上げる取り組みやサービスなどを、医療の中に取り入れる仕組みがあれば、皆さんの頑張っている力がより有効に結びつくことができると思っています。今はテコの位置が悪いために、現場での努力が医療にうまく伝わっていない気がします。ゆくゆくは、そのテコの位置を動かせるような存在になることができたらと考えています。そこにMD/MBA(医師で経営管理学を学んだ者)の存在意義があると思っています。

将来の道として経営管理学を選択したのには二つの理由がありまして、一つは時間的なメリットです。経営管理学を学べば私がやりたい事により早く到達できると考えました。二つ目の理由は、経営への違和感です。病院の株式会社化とか病院の再生に関わる方の経営管理についてのお話を伺う限りでは、フォーカスを当てる部分に違和感を持ったのです。病院を効率化していく、その為にはどうしたらよいか−という考えは医療倫理面においてコンフリクトを起こしてしまうことがあるように思います。彼らの場合、そのような医療倫理を真っ白な状態から少しずつ積み上げてはいますが、やはり思考は経営に基づいているように感じます。けれども、通常の経営手法をそのまま医療組織に当てはめて良いのかどうか・・・。「医療機関を経営する」とは聞こえは良いですが、利益と医療の間にコンフリクトが生じやすいので、経営の視点だけでは無理が出てくると思います。そこで医療の視点をもち、経営面においても参加できるようになればまた違った結果が得られるのではないかと考えました。経営管理学を学ぶことで、“医療でお金儲け”ではなく、少しでも社会の中の医療をより良く出来るのではないかと考えます。5年間臨床と向き合ってきた私にとって、やはり「医療現場」をどうにかしなければという思いは変えがたいです。

留学後に目指している道は3つあります。一つは医療現場の世界に留まり臨床に取り組むこと。次に、医療現場から出た場合、医療ステークホルダーへのコンサルティング業務を行う企業で活躍すること。最後に、医療をサポートするような機関を自ら作り出すことを考えています。こうした取り組みを通して、「医療の社会化」を進めることが私の人生の目標です。

【医療有資格者の皆さんに一言!】

“Be optimistic.” 楽観的になって下さい。医療の有資格者というのは大変スペシャルな存在だと思います。他の業種と違い、医療に携わっている方々は医療に取り組むだけで良いわけです。患者さんのために皆が一丸となって仕事をする。一つの理念が共有されている産業というのは他には殆どありません。他の産業では、まず経済的利益を考える。その上で「やりがい探し」を行う。一方、医療現場ではやりがいと仕事が非常に密接につながっている。迷いなく自分の価値観と一致した仕事ができるというのは素晴しいことだと思います。このことは私自身、外から医療をみてやっとわかりました。(笑)ですから医療に関われる幸せをもっと自覚しても良かったと思いますね。拘束時間も長いですし、辛いことも多くありますが自分の価値観に一致した仕事ができることはすばらしい幸せです。幸せを自覚する為には外の世界に好奇心を持つ必要があると思います。逆説的に聞こえますが、医療の外側に目を向けることで医療をよりよく知ることができると思います。そうすることで、「医療の社会化」が進む。社会は医療に近づこうとしているわけですから、そろそろ医療も社会に近づいて良いと思います。そして、幸せを自覚して仕事に対して楽観的になってもらいたいと私は伝えたいです。

追伸〜インタビュー後記〜

飛田先生には大変貴重なお話を頂きまして、この場を借りて感謝申し上げます。6月よりミシガン大学にて経営管理学を学ばれる先生ですが、取材中も「物と心」に関する関係性を分り易く紙面に書いて説明して下さる等、非常に熱い志を感じました。今後のご活躍を楽しみにしております!また医療界における閉塞感につきましても、飛田先生より現場での実状をお話し頂きましたので追加致します。(以下)

『現場は「こうしなければ!」と思う一方、それが経営陣まで伝わらない―でも、現場は頑張ることで問題を解決する。経営陣にとってはあたかも問題がないように見えてしまうわけです。しかし、現場が頑張り続けて疲労していると、新しい経営陣が問題に気づいて新しい取り組みを行おうとしても、もはや現場には変革へのエネルギーが残されていないのです。(一部抜粋)』

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