HOMEDOCTOR’S EYEクローズアップDr.慶應義塾大学医学部眼科教授 坪田一男 先生

慶應義塾大学医学部眼科教授 坪田一男 先生

クローズアップドクター

アンチ・エイジング医学について

坪田一男 (つぼたかずお)

【プロフィール】

坪田一男 (つぼたかずお)
慶應義塾大学医学部卒業

1955年東京生まれ。慶應義塾大学医学部眼科教授。南青山アイクリニック手術顧問。

1980年、慶應義塾大学医学部卒業。後、日米の医師免許を取得、85年アメリカのハーバード大学に留学、87年角膜クリニカルフェロー卒業。

1999年、医学界で世界的権威のジャーナル「The New England Journal ofMedicine」の巻頭論文に“角膜上皮のステムセル移植術”が掲載され、世界に先駆けて体細胞ステムセル移植による治療を成功させたことで注目を集める。ドライアイ研究においても高く評価され、各国で講演・指導にあたるほか、レーシック(近視手術)では、プロゴルファー(芹澤信雄氏、片山晋吾氏、中島常幸氏ほか)やスポーツ選手の多くを執刀する。

国内では、眼科専門医による安全な視力治療の普及、アイバンクの活動にも精力的に取り組んでいる。

2001年、日本でいち早く米国抗加齢医学会の認定医となり、日本における科学的アンチエイジングメディスンの研究と導入に本格的に取り組む、日本抗加齢医学会理事。

プライベートでは、3男2女の父。公私ともにめまぐるしくパワフルに生きる超ポジティブな人生観をもとに、『ごきげんだから、うまくいく!』、『朝を変えれば人生が三倍楽しくなる』などのエッセイを執筆。その他『理系人間のための人生戦略』、
『社会人のための大学合格戦略』、『老眼をあきらめるな!』、『老いに勝つ10の秘訣』『不老!の方法』など著書多数。

1、アンチ・エイジング医学について

磯野:まず最初に先生に伺いたいのは、先生は眼科領域で既に世界的にも屈指の業績がある中で、新たにアンチ・エイジング(※1)の分野に取り組まれてるわけですが、眼科領域から、アンチ・エイジング分野に新たに踏み込まれた、きっかけはなんですか?

坪田:1992年からやっている屈折矯正手術というものがありまして、その中で97年からレーシック(※2)という治療を始めました。レーシックを受けられた患者様は、(裸眼視力を回復して)よく見えるようになると、どういうわけか女性は綺麗になり男性は元気になる。白内障手術のあともそうです。これはどうしてなんだろうと思ったわけです。

磯野:レーシックをすると、みなさん元気になる?

坪田:明日も僕はレーシックを45件を執刀するのですが、今まで診てきた患者さま、とくに中高年の方など、生き生きと元気に、若返られるように感じます。それがすごく興味深くて、「元気になれる。若返る」というキーワードで勉強していったらなんと、アンチ・エイジング医学という医学があることをアメリカで見つけた。そこで、勉強を進めると、ホルモン療法もありキレーション療法(※3)もありサプリメントなどの知識も学ぶ必要がある。これは本物の医学だなと思って本気で勉強を始めたんです。
でも、まだまだアメリカでも始まったばかりで、これからの医学といえます。

磯野:アメリカでもまだ、始まったばかりの医学なのですか?

坪田:そう、アメリカでも新しい分野の医学です。自分としては、これからは日本でのアンチ・エイジング医学が世界でトップになるように研究や臨床を進めていきたいと考えています。

磯野:医学というとアメリカの方が進歩している分野も多く、日本からアメリカに留学して勉強してくる先生達も多いですが、世界における日本のアンチ・エイジング医学の位置づけはどのような感じでしょうか?

坪田:アメリカではアンチ・エイジング医学というのが、医学会ではなかなか主流にはなっていないんですよ。沢山のドクターがやっているけれども、AMA(アメリカン・メディカル・アソシエーション)というアメリカの医師会はアンチ・エイジング医学に対してサポーティブではないのです。

磯野:それはどうしてですか?

坪田:アメリカでは早くからビジネスがそこに介入してきたことでネガティブなイメージがあったのかもしれない。日本では幸い、厚生労働省や様々な他の学会の先生方のサポートもあり、非常に健全なかたちでアンチ・エイジング医学をスタート出来てとても良かったと思っています。

磯野:日本では、これから社会としてはビジネスとして、アンチ・エイジングに注目する方々が多く出てくる気がしますが、医学としてのアンチ・エイジングとビジネスとの関係は今後どのようになって行くとお考えですか?

坪田:本物のアンチ・エイジング医学はやっぱり本当に学問として研究されて、評価をされて、次の世代に現れてくると思う。だから、本当の医学としての科学的な情報を僕たちが伝えていきたいと思って、雑誌やホームページをつくったりして情報公開しています。今までの学会誌みたいに、医者だけが読む雑誌じゃなくて、誰でも読んでもらえるように雑誌をつくったのです。
これからアンチ・エイジングでは、エイジングに関係するようないろんな研究が日本では世界に先駆けて結構良いものが沢山出てくると思いますね。

2、21世紀におけるアンチ・エイジング医学の位置づけ

磯野:本日のテーマでもあります、21世紀におけるアンチ・エイジング医学の位置づけという事に関して、先生のお考えは如何でしょうか?

坪田:21世紀というか、エイジングを研究することによってたくさんの病気が予防可能になりますよね。病気やあるいはエイジングそのものをコントロールすることによって健康寿命が長くなるし、より元気でハッピーな時間が長くなる。言ってみれば、病気ってイメージ的に言うと、モグラ叩きのもぐらみたいにポンと色々でてくるじゃないですか?! 病気になるたびに叩いているのだけど、全体的にそのモグラなんかが出てくる率を、エイジングっていうプレッシャーを取る事によってすごく下げる。もちろん、最終的には出てきますよ。誰でも絶対いつか死んじゃう。だけど下から押し上げてくる圧力をさげることによって非常にボンボンボンボン出てくるようなことは無くなるのではないか、と僕は考えているんです。

磯野:アンチ・エイジング医学は、予防医学と非常に近い関係にあると思いますが、如何でしょう?

坪田:近いですね。予防医学という考え方ももちろん大切なのですが、僕はあえて、アンチ・エイジング医学を研究したいと考えました。

磯野:それはどうしてですか?

坪田:なんか、病気を予防するって言うのが、ちょっと受け身な感じ、大事なことなんですけどね。守りに入るみたいなイメージがどうもしっくりこなくて、でもアンチ・エイジングっていう言葉を聞いたとたん俄然やる気がでた。すごくポジティブで、これはいいねって感じで。笑。

磯野:

磯野:アンチ・エイジングと統合医療は今後、両者の方向性というか、関係はどのようになると思いますか?そこには、日本の保険制度の問題もあると思います。アンチ・エイジングも統合医療も保険診療の枠の中では、ちょっと捉え難いですよね?

坪田:はい、アンチ・エイジング医学は今の保険制度の中では自費診療が多いです。
でも、自分で健康に気を使うことで、病気にならない人がいっぱい増えれば日本の医療保険を使う人が少なくなるから日本の保険財政としては負担が軽くなると考えています。

磯野:自費のアンチ・エイジング医療を選ぶことで、病気の人が少なくなるから医療費が削減される。

坪田:そう、そう。

坪田:このままいくと2025年に80兆円になってしまうといわれている医療費が、アンチ・エイジングが出てきたお陰で60兆円ぐらいになれば大分違いますよね。

磯野:そうするとアンチ・エイジング医療の発展が日本の医療制度の保険財政にもかなり良い方向に動くと。

坪田:はい。そこに期待をして、自分たちも研究を進めたいと考えています。

磯野:これまで我が国は、独自の保険制度の中で医療が発展して来ましたので、今までは、同じお金を払ってみんな均質の医療を平等に受けられるということで、それはそれで世界に誇れるシステムだと思いますが、一方で、もっとお金出すから、もっと良い医療を受けたいといってもそれが制度的に難しかったという部分があります。今後、統合医療なんかがでてきてアメリカ的といったら語弊があるかも知れませんが、お金持ちの人はお金を払ってより良い医療を、そうでない人でも、それなりの医療を!というような方向性に行くのでしょうか?

坪田:それなりというのではなく、日本はセーフティネットがすごくしっかりしているから抜群のシステムが構築できるのではないかと思います。アメリカは医療がビジネスに傾きすぎて問題をたくさん抱えている。日本では今、いわゆる混合診療に関しても、医師の専門家会議が発足してきっちりと審議していこうとしている。僕もメンバーですが、日本のシステムの良い部分は残しながら、今まで取り入れられなかった高度な医療や治療を患者様が受けられるようにならないか、と。 必要な医療が、お金のあるなしで受けられない、というのは問題がある。ただ、ある人には少しは払ってもらって、払えない人は保護するとか、たとえば、余裕のある人が予防に自費でお金をかけて病気にならないようにすることは、すごくいいでしょ。

磯野:世界の先進国が羨むような現在の日本の保険制度を良い点を生かしつつということですよね。それは、かなり良いですね。

坪田:世界でも理想的な例になるように、自分としても頑張っていきたいと考えています。

3、メッセージ − これからの医療 ―

磯野:当サイトをご覧になる方々は、ドクター、看護師さんを始め医療従事者ばかりです。そこで、サイトをご覧になる医療従事者の方に先生からメッセージを頂けますか?

坪田:これからの医療は大きく変わって行くということですね。 アンチ・エイジングはひとつの大きな流れですけど、日本の医療制度も変換の時期にあると思います。今までにない良い医療が、これから取り入れられていき、患者様の選択が増えるような時代が来るのではないかと思います。これからは、いろんな枠組みが変わっていくと思います。僕は85年の歴史がある教室にいますが、どう時代にマッチした教室運営をするかと常に考えています。最近は、新しい試みとして「レビュー&チャレンジ」という会社でいえば株主総会のようなことを始めました。

磯野:ところで、先生のハーバード大学での留学経験とその後の深いお付き合いについてお聞きしたいのですが?!

坪田:ハーバード大学は、僕がクリニカルフェローシップ(特別研究員)をとった大学です。「同じ釜の飯を食べる」という言葉が日本語にあるけれど、2年間、正にそんな生活を送りました。一緒に勉強した仲間が教授になり、今でも彼らとすごく仲良しですよね。ジョンズ・ホプキンス大学に行った友人とも、今でもいい付き合いをしています。

磯野:沢山の後輩がハーバード大学へ行っていらっしゃいますね。

坪田:嬉しいことです。『一男がレコメンデーション(推薦)したら全員取る』ってみんな言ってくれてるんですよ。

磯野:アメリカという国は自分が信頼する人に対しては率直に認める寛容さがありますよね。

坪田:そうかもしれません。でも、送った後輩たちも、みんな素晴らしく、評価されて、さらに信頼を高めてくれたのだと思います。

磯野:先生にお目にかかるまで、どんな先生かと推察をしていましたが、アンチ・エイジング医学についても、直接お聞きすることで納得がいきました。

坪田:ありがとうございます

※1 アンチ・エイジング医学
アンチ・エイジング(抗加齢)医学とは、従来の医療が対象にしていた「病気の治療」から、「健康な人の更なる健康」を指導するプラスの医療で、究極の予防医学。元気に長寿を享受することを目指す理論的・実践的科学ともいえる。

※2 レーシック(LASIK:Laser-Assisted In Situ Keratomileusis)
エキシマレーザーを使用した視力矯正の為の新しい技術。LASIKを直訳すると、「角膜の層間にレーザーを照射して組織を薄く切除する」という意味。
これまでの視力矯正手術に比べ、安全で痛みが少なく、安定した矯正効果が得られる為、一般的に普及するようになった近視や乱視の治療法。 

※3 キレーション療法
EDTAという合成アミノ酸を点滴して体内の不要ミネラルを排泄する新しい療法。もともとは鉛中毒の鉛を除去する治療だったが、近年、動脈硬化の予防に効 果があることが注目され、血管を若く保つ治療として期待されている。動脈硬化の原因とされる血液中の余剰カルシウムを除去するほか、フリーラジカルのもと となる水銀や鉛などの重金属類を排泄して、老化や疾病を予防する。

坪田一男関連リンク
日本抗加齢医学会 URL: http://www.anti-aging.gr.jp
日本抗加齢医学会雑誌「アンチ・エイジング医学」(編集長:坪田一男)
URL: http://www.m-review.co.jp/magazine/mag46/map_46.htm#1
ドライアイ研究会 (世話人代表:坪田一男)
今年は、日本発のドライアイ診断基準を検討するなど、活動をさらに広げている。実際のドライアイ診療に役立つ情報も沢山学べる講習会を9月に東京、11月に大阪で開催!オンライン参加申し込みもある。
http://www.dryeye.ne.jp/
坪田一男ホームページ
http://www.tsubota.ne.jp/
坪田一男先生が手術顧問をつとめる南青山アイクリニック

(聞き手:(株)メディカル・コンシェルジュ 代表取締役 磯野晴崇)

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