HOMEDOCTOR’S EYEクローズアップDr.東京女子医科大学病院 副院長 永井厚志 先生

東京女子医科大学病院 副院長 永井厚志 先生

クローズアップドクター

良き医療をめざして

永井厚志(ながいあつし)

【プロフィール】

永井厚志(ながいあつし)
東京女子医科大学病院 副院長
昭和22年 2月9日生

昭和48年 3月 東北大学医学部卒業
昭和48年 4月 聖路加国際病院胸部外科・外科レジデント
昭和49年 4月 東京女子医科大学・総合内科入局、医療練士研修生
昭和51年 5月 東京女子医科大学総合内科助手
昭和57年10月〜昭和59年9月
British Columbia 大(CANADA),William M.Thurlbeck
教授の病理学教室に留学 肺の生長因子、慢性閉塞性肺疾患の構造と機能の
関係について研究
昭和 60年 6月 東京女子医科大学第一内科学講座講師
平成 4年 8月 東京女子医科大学第一内科学講座助教授
平成 9年 3月 東京女子医科大学第一内科学講座教授
平成 13年 4月 東京女子医科大学呼吸器センター所長

「良き医療をめざして」

磯野:「良き医療をめざして」ということですが、現在電子カルテなど医療内のIT化が進む中、多種の医療従事者同士の情報交換も以前よりスムーズに、なおかつ効率よく行われますが、しかし一方で、検査の数字等だけの共有では意味がないという声もあります。先生は患者さんをみるための医療従事者同士の情報交換に関してなにか具体的な方策であるとか、こうあるべきものだというものはありますでしょうか?

永井:情報交換についてお話する前に医療従事者同士が“これは理解しておいたほうがいい!”というポイントがあります。それは「お互いの行動範囲を理解しておくこと」です。基本的に個人の行動というのは仕事の方向性・量・時間という3つの要素から成り立っていますね。そしてそれは各々の医療従事者の役割を決める要素です。では個々の役割がそれぞれ違う医療チームは、一体どうすればチーム力を最大限に発揮させることができるでしょうか?・・・図で表現するとわかりやすいかもしれませんね。横軸を方向性とし、縦軸を力とすると、ちょうどそのベクトルが45度になったときにチームパワーは最大限に発揮されます。ちょっと小難しい論理ですが、要するに「チームの方向性と力のバランス」が大切ということですね。ですからチーム力を発揮するには、まずそれぞれの職域の人達がお互いの行動を理解しあうことが第一歩です。そのうえでの情報交換は大変意味があることですよ。

磯野:つまりただお互いの情報を共有するだけでは医療チームとして上手く機能しないということですか?

永井:そうですね。少々話は変わりますが、よく我々のマネージメントは製造業の方達との比較がされます。ただ医療が彼らと絶対的に違うのは不確定要素が大変多い業種ということです。ですから、リスクの除去とか、無駄を省くという作業は極めて難しいですね。・・・時に、ビジネスをされている方が入院されていますと、いろんな医師や看護師さんの動きをジーッと観察しているようでして、「動きに無駄が多い!!」と指摘されてしまいます。(笑)でも、不確定要素の多い医療ですからね、ストレートにはいきませんよね。結局「質の良い安全な医療の提供」というのは不確定要素の多い中で、トータルとしては効率よく行われる医療ということになります。では効率よくというのはどうやって??となるじゃないですか。それを情報に関して言えば共有手段としてカルテを一元化するところから始まりますね。わたくしが最初にいた聖路加国際病院は医師のカルテと看護師のカルテは一緒でした。女子医大も最初は一緒に綴じられていましたけど、後で分かれてしまいました。要するに職種ごとに行動が違うからカルテを一つにしても無駄じゃないの?という考えが根底にあったわけです。しかし、最終的には一つの医療チームとして医療をしなければいけない!ということで一元化しました。しかし、形だけ整えれば意味のある情報交換ができるわけではないです。なおかつ、そこでお互いの言葉のコミュニケーションがないと微妙な言葉のニュアンスが伝えられません。患者さんが同じ言葉を話しても「患者さんはこういう意味ですよ」と継続的に看る看護師さんが医師のほうに教えて下されば「あっ!この患者さんが言っていることは同じ言葉でもこういう意味で非常に重い意味をもっているのか」ってわかりますよね。それが良い医療につながるキーポイントです。ですからカルテ一元化という形だけをつくっても、なかなか良い医療を行うことは難しいですよね。

磯野:先生のいる女子医大病院では企画室なるものを設けられているようですが、これは何年ぐらい前からですか?

永井:ええ、それはつい最近からです。

磯野:今おっしゃったような主旨も含まれていると・・?

永井:企画室はまだそこまで発達していません。今はどこの箇所がどういう仕事をしているかをヒアリングしている段階です。私たちの病院はセンター制で、診療を独立採算で行っていました。ですから、他のセンターが何をやっているのか分かりませんでした。もちろん現在は統合されていますが、当時の状況から「それではいけない!」ということで、病院を総合的にマネージメントをするための情報を得る場所として企画室を設けました。

磯野:情報収集をしている段階なのですね?

永井:そうです。ヒアリングは過去に私どももやったのですが、どうも言っていることと実際やっていることが・・ちょっと違いましてね(笑)ですので、もう少し話しやすい人か、あるいはもっと積極的に細かく見る人・・そういう意味で一部の適性のある先生たちにヒアリングをお願いしました。

磯野:我々も企業経営を通して同じ要素を感じることも多いですから、別角度からお話を聞いていろいろと勉強になります。では最後に医療従事者がもたなければならない問題意識についてはどのようにお考えですか?

永井:特に若いお医者さんに多いのですが、彼らは無理をします。自分が知らないと言うことをさらけだすことに非常に抵抗感があります。患者さんに良かれと思うのでしょう。端的な例をとり挙げますと、分からない病気があった時、あるいは自分が思っていないデータがでた時にちゃんと本を出して調べられるか、それともなんとなくそれらしいことを話して・・・。それでも良い先生はその後調べて、次回修正するということもありますね。(笑)しかし、できればその時に「私はそのことについて知らないので調べますよ」と言って・・・調べて嫌がる患者さんはいないですから。「正確にきちんと正しい情報を伝えること」は仕事の上でのプロのマナーなわけです。どんな分野であっても、どんな地位であっても役割を認識してほしいですね。そして最終的に私達は「何かを予感する感受性」を磨いてほしいと思っています。何かを言われてスタートをするというのは、仕事をする上で最低限のことです。それをしたうえに「ん?」という第六感をとぎすませてほしい。ちょっと贅沢かもしれないけどやってほしいですね。

磯野:本日は大変貴重なお話をどうもありがとうございました。

研究領域
1.肺の生長因子
2.肺疾患の病態と治療
3.肺の傷害と修復機序

日本呼吸器学会 常務理事、代議員、雑誌編集委員会委員長
同喫煙問題に関する委員会委員長
同学会認定医制協議会委員
同内科関連専門医認定委員会委員
日本内科学会 評議員、学術集会運営委員会委員、同資格認定試験委員
日本肺癌学会  評議員、学術委員会委員
日本呼吸器内視鏡学会 理事、評議員、将来計画委員会委員
日本呼吸管理学会 理事、総務委員、財務委員
学位授与機構審査会専門委員 (平成10年〜)
環境省ディーゼル排気微粒子リスク評価検討会委員平成13年〜
厚生労働省副作用被害判定調査会委員
財務省財政制度等審議会専門委員 平成15年1月〜
厚生労働省薬事・食品衛生審議会委員 平成15年1月〜平成17年1月
日本呼吸器管理学会理事 平成15年10月

(聞き手:(株)メディカル・コンシェルジュ 代表取締役 磯野晴崇)

当社の転職支援サービス

わたしたちは、誠意を持って
医師の皆様をサポートします!

求人をお探しの医師の方無料会員登録

全国25拠点のネットワーク。転職・1日単位の健康診断・アルバイトまで丁寧にサポート!

MC-産業医ネット
官公庁・自治体様向け アウトソーシング事業 お問い合わせはこちら>>
求人をお探しの医師の方無料会員登録

わたしたちは、
誠意を持って
医師の皆様を
サポートします

ドクターズネットはスマートフォン対応
すすめスポット求人多数
メディカル・コンシェルジュ
ページのTOPへ